キッチンカーにエコ容器を導入する理由とキッチンカー向き容器3種
キッチンカーでエコ容器の導入を考えなければならない理由について解説します。
キッチンカーでは料理を使い捨て(ワンウェイ)容器に入れて提供するのが基本。中でも軽くて安価で、素材によっては電子レンジでの温めも可能なプラスチック容器は、キッチンカーでのメニュー提供における重要なアイテムだといえます。
しかし時代の流れは確実に脱プラスチック化へ向かっています。2021年6月4日、プラスチックごみの削減とリサイクル促進を目的とした「プラスチック資源循環促進法」が国会で成立、2022年4月から施行されることになりました。
この記事では法令の動向も踏まえながら、今後どんな容器を使っていけば意識の高い消費者にも喜ばれ、お店の好感度アップにもつながるかを考えるとともに、キッチンカーでの提供に向いた容器3種もご紹介します。
今、キッチンカーでエコ容器の導入を考えなければならない理由とは
キッチンカーでエコ容器の導入を考えなければならない理由を3つ挙げてみましょう。この3つはそれぞれが絡み合いながら大きなうねりを作っているといえます。
1つめは、世界的な潮流である「SDGs(エスディージーズ)」の存在です。
2つめとしては、「SDGsネイティブ」と言われるミレニアル世代の存在感が消費者としても高まっている中で、若い環境活動家たちが一種のインフルエンサーとしてその発信力を強め、政府も耳を傾けるような存在になっているという現実です。
3つめは、SNS対策です。お店を守りながら魅力を伝えるためのツールとしてSNSを上手に活用する必要があります。
これら3つの理由をキッチンカービジネスの展開において前向きに捉えるならば、エコ容器を1つのテコとしてSDGsを視野に入れた取り組みをすることでお店の価値が高まり、同時に消費者への発信力も強めることが可能です。
SDGsの影響
SDGsは2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標で、「誰一人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会」を実現しようとするものです。
貧困や飢餓の克服など、主に発展途上国向けのメッセージのほか、先進国に向けても「製品を作る側、使う側の責任(目標12)」を求めています。
具体的には商品や資源を生産、消費する方法を変えることで持続可能な社会が実現できるとし、企業だけでなく消費者にも廃棄物の発生防止や再利用(マテリアルリサイクル)を促しています。
プラスチックごみは温室効果ガス(CO2)の発生原因であり、海洋汚染の原因とされていることから、スーパーマーケットでのレジ袋廃止、プラスチック製ストローの配布中止など、日本の産業界全体を揺るがす動きの背景には、このSDGsの影響があるといえます。
環境活動家の影響力
キッチンカービジネスを担う側としては、時代の潮流としてのエコを意識することが、幅広い世代の顧客を獲得するカギといえます。
ここで近年注目されている環境活動家3人を挙げておきましょう。
- グレタ・トゥンベリさん(18歳)
- 「国連気候行動サミット2019/9/23」の演説で大人たちを叱責し、一躍世界的に有名になった人です。
- 露木志奈(つゆきしいな)さん(20歳)
- グレタさんに影響を受けた日本の環境活動家で、中高生に向けた講演活動を精力的に行っています。
- ハウイー・オー(Howey Ou)さん(18歳)
- 「中国のグレタ」と言われる人で、中国での温室効果ガス削減のため、抗議の学校ストライキを組織しています。
これらの若手環境活動家の先例となったのは、日系4世のカナダ人、カリス・スズキ・セヴァンさんです。
1992年、セヴァンさんが12歳の時にリオデジャネイロで開催された「地球環境サミット」での6分間のスピーチは、決して大人を糾弾するような内容ではなく、「地球温暖化は自分たちだけでなく次世代の未来も奪うものだから、皆で生き方を変えましょう」と呼びかけるピュアで感動的なものでした。
政府も2020年6月、小泉環境相が若者らと意見交換するなどグレタ世代の影響力を認め、意見を取り上げてゆこうとする姿勢を示しています。
SNS対策
キッチンカーのような出店地域での信用が大切なスモールビジネスでは、SNS対策も重要です。
一部の消費者からであっても「エコに関心のないお店」だと認定されると、お客さんが容器を道路に捨てていた、などというネガティブな「証拠写真」をSNSにアップされることもないとはいえません。
Instagram、TwitterなどのSNSはお店の魅力を伝える宣伝ツールとして大きな武器といえますが、ビジネスにとっては諸刃の剣(つるぎ)でもあります。
キッチンカーオーナーとしては、環境活動家などのインフルエンサーに心を寄せ、自らをSDGsネイティブと位置づける人たちからどう見られているかに無関心にならず、むしろその人たちからも支持されるエコの発信者でありたいものです。
キッチンカー向けエコ容器3種
キッチンカーでの提供に向いたエコ容器として「紙製容器」「竹繊維を使った容器」「ハイブリッド素材を使った容器」の3種類をご紹介します。いずれもエコをイメージさせる柔らかな質感を持ちつつ、耐熱・耐油性、電子レンジ対応など、機能性にも優れています。
- 紙製容器
- 紙製の容器は、誰が見ても「これはエコだな」というメッセージ性を持っており、提供側にも消費者にも安心感を与える容器といえます。
- 紙容器本来のマイナス面としては液体に弱い、熱が伝わりやすいという点がありますが、耐水性を例にとればこの難点をカバーするのがラミネートなどのポリエチレン素材によるコーティング技術です。
- コーティングを施した製品は一部石油系素材を含むものの、すべてがプラスチックでできた容器に比べれば石油資源の節約とCO2の削減に貢献するという意味で、エコロジーに配慮した容器といえるでしょう。
- また紙は印刷が簡単にできる点も特徴で、100均のアイロンプリントシールなどを使えば手軽にお店の個性を打ち出す演出が可能です。
- キッチンカーで紙製容器を使う場合は、耐熱性、耐油性に優れた製品も開発されていますから、販売するメニューに適したものを選ぶことで、スープや汁気の多い丼、揚げ物など様々なメニューを提供することができます。
- 竹繊維を使った容器
- 竹繊維を使った容器は100%植物繊維でできていますから生分解性に優れ、土に埋めれば自然に還る素材です。
- 耐水性、耐油性にも優れており、電子レンジの使用が可能です。100%竹素材でできたものと、竹とバガス(サトウキビの搾りかす)の混合素材である竹モールド容器があります。
- コスト的には弁当容器で1枚当たり40円程度(竹モールド容器)とかなり割高ですが、未ざらしの素材感は消費者にナチュラルな雰囲気を与える点が魅力です。竹容器はエコをアピールするお店のブランディングを考える際には、使用する容器として選択肢の1つになるでしょう。
- 「バイオPPF」などのハイブリッド素材
- 既存素材と植物由来素材のミックスによるハイブリッド製品で、石油由来のポリプロピレンにサトウキビなどからできたプラスチックを配合したバイオ素材です。
- 耐熱温度130℃ですので、丼物、麺類、カレーなどの提供時にも利用でき、電子レンジの使用が可能です。
- 法整備の後押しもあり、機能性に優れた製品の開発がさらに進む分野と言っていいでしょう。
キッチンカーでのエコ容器導入準備は冷静かつポジディブに
プラスチック資源循環促進法は、まずは全国展開するコンビニエンスストアやファミリーレストランなどの大企業に義務を課す法律ですが、企業に対してはプラスチックに代替する素材の活用推進、消費者に対してはプラスチックの使用を抑制する義務も盛り込んでいます。
従って今後、キッチンカーで使う容器の選定は、機能やコストだけではなくエコの視点からも考える必要があり、キッチンカーオーナーとしては「ピンチをチャンスに」のポジティブな気持ちで、いつでも走り出せるような心がけが今、必要ではないでしょうか。