キッチンカーでアルコール(お酒)は販売できる?条件や販売時の注意点を解説
夜の街角にひっそりとたたずむバー、活気のある居酒屋など、アルコールを販売しているお店は、お酒好きにとって疲れた心を癒してくれる大切な場所です。でも、繁華街まで足を運ぶのがおっくうな人にとっては、敷居が高いと感じるかもしれません。
そんな人でも気軽に足を運びやすいのが、アルコールを販売するタイプのキッチンカーです。駐車場など限られたスペースでも営業でき、運営者は予算の面で負担が少なくなります。近所の常連さんのハートをつかめば、安定した経営も夢ではありません。
この記事では、キッチンカーでアルコールを販売する場合の条件や、販売時の注意点について解説します。
- 『予算の関係で、キッチンカーを使ってバーを開きたい』
- 『繁華街への出店はちょっと怖い……』
- 『お酒を売るってことは、結構面倒な手続きが必要なのかな?』
そのような疑問・不安をお持ちの方は、ぜひお読みください!
お酒の売り方は大きく2種類に分かれる
キッチンカーでお酒を販売することを想定した場合、物理的に考えられる方法は以下の2種類です。
- 未開栓のまま提供すること
- 飲める状態で提供すること
まず、未開栓のまま提供するというのは、いわゆる「酒屋」を自動車販売で行うケースが該当します。様々なお酒をトラックなどに積んで、移動型スーパーのような形で販売する状況がイメージできます。
次に、飲める状態で提供する方法ですが、こちらは居酒屋・バー・スナックなどのような形態が考えられます。ただ、定員や積載量などを考えると、バーもしくはお酒の種類を制限した居酒屋などが現実的でしょう。
ここで問題となるのが、キッチンカーを使うならどちらの方法が選べて、どのようなメリット・デメリットがあるのかです。しかし、それらの比較検討を行うまでもなく、日本において「飲める状態で提供すること」以外の選択肢を選ぶことはできません。
キッチンカーでお酒を売るにはどうする?
キッチンカーを使ったお酒の販売方法について、もう少し掘り下げていきましょう。
先ほど、日本では「飲める状態で(お酒を)提供すること」以外の移動販売はできないとお伝えしました。その根拠は酒税法にあり、船や運搬車を使ってお酒の小売をする(スーパーのようにお酒そのものを瓶・缶の状態で売る)ことは、日本国内では認められていません。
しかし、キッチンカーでお酒を提供することそのものが否定されているわけではなく、飲食店営業許可を取得すれば、アルコールをコップ・グラスなどに入れて提供することが認められます。お酒を入れる容器が問題になるのではなく、あくまでもお酒を開栓したかどうかが問題になります。
また、カクテル・ソーダ割りなどのように、お酒とは別の飲料を混ぜて販売することも認められます。本格的なカクテルを販売する場合、リンゴ・ミント・バジルといった生のフルーツ・ハーブを使うカクテルを扱う際に、一部都道府県でNGが出るおそれもありますから、事前に各地域の保健所に確認が必要です。
出店を検討している都道府県によっては、そもそもお酒の移動販売自体をNGとしているところもあります。その場合は、戦略の面で別の地域に出店することを検討した方がスムーズです。
キッチンカーでアルコールを提供するために必要な各種条件
キッチンカーでアルコール類を提供するためには、最低限必要な許可・免許があります。
また、営業時間によって別途必要となる届出があったり、ファーストフードを扱う場合よりも面倒な条件が求められたりします。
以下の条件を満たせるよう、あらかじめ準備を進めておくと、開業がスムーズになるはずです。
許可・免許の取得
キッチンカーの営業およびアルコールの取り扱いに必要な許可・免許は、大きく分けて以下の通りです。
- 普通自動車免許
- 車の大きさによっては中型免許クラスが必要
- 食品衛生責任者
- 食品衛生協会の講習を受講することで取得できる
- 飲食店営業許可
- 営業する地域の保健所で許可をもらう
飲食店営業許可に関しては、保健所によって判断が異なるため、アルコールやおつまみを提供するのにどの営業許可をもらえばよいのか、どういった設備が必要になるのかを、営業する地域を管轄する保健所に確認します。
キッチンカーの製作を業者に依頼する場合は、必要な設備をどのように組み込むかや、その際の製作費用について、業者に確認しておくと良いです。
深夜酒類提供飲食店営業開始の届出
キッチンカーでアルコールを提供しようと考えている人の中には、おそらく深夜営業も視野に入れている人もいると思います。
深夜0時以降も朝まで営業する場合は、別途「深夜酒類提供飲食店営業開始」の届け出が必要となります。こちらは管轄の警察署に届出が必要で、届出から10日後に営業ができるようになります。
出店場所ごとの許可取得
資格や免許さえあればアルコールを販売して問題がないかと言えばそうではありません。お酒を扱うことで生まれるトラブルも想定し、出店場所やイベントのオーナーからアルコール販売の許可を得えておくと安心です。
キッチンカーでアルコールを楽しんでもらうための注意点
主にアルコールを楽しんでもらうためにキッチンカーを営業する場合、店舗型の居酒屋・バーを営業する状況では考える必要のないことにも注意を払う必要があります。
例えば、以下にあげる点については、売上やトラブル防止にも関わることなので、十分注意してください。
座れる場所を確保する
アルコールは、一部の店舗で立ち飲みなどもできますが、座って楽しむのが一般的です。しかし、キッチンカーという構造上、どうしても確保できるスペースに限りがあります。
そこで、ベンチのある場所を出店場所として選ぶか、折り畳みイスを収納して持っていくなどして対応することをおすすめします。このほか、特注となるので費用はかかりますが、キッチンカー自体にカウンターを作成する方法もあります。
なぜ「キッチンカー」でないとダメなのかをアピールする
キッチンカーという販売形態でお酒を提供する以上、顧客にとってのメリットを意識し、なぜキッチンカーで販売しなければならないのかを考えて、効果的にアピールしなければなりません。
お酒を瓶・缶のまま販売することは認められないとはいえ、現代ではコンビニがいたるところにありますから、お酒を手に入れようと思えば比較的かんたんに手に入るからです。
具体的には、外の空気を吸いながらお酒を飲めるという解放感・狭いスペースの中で自然発生する人間関係の心地よさなど、お酒を求める人の隠れた心理を分析して出品場所を探す必要があります。
お酒は嗜好品ですから、一度顧客の心をつかめばリピーターも増えやすくなるため、できるだけ最初の段階で詳しく「キッチンカーならではのメリット」を自分なりに考えておきましょう。
周囲の環境に気を配る
キッチンカーの出店先は様々ですが、アルコールが主な商品となる場合、日中にイベント等でお店を出店する場合を除いては、やはり夜の出店が多くなるでしょう。
繁華街のように、夜中になっても喧騒が聞こえる環境で出店するならまだしも、住宅街に近いところで営業するなら、騒音を気にする人が少ない環境を選ばなければなりません。
また、発電機付きのキッチンカーを使うと、発電に伴う騒音は避けられないため、できるだけコンセントが近くにある場所を借りたいところ。駐車場スペースや建物の一区画など、邪魔にならないところを交渉して借りる工夫が必要です。
まとめ
キッチンカーでアルコールを販売する場合、瓶・缶に入った状態のまま販売する「小売」は認められていません。よって、営業形態としてはバーや居酒屋のような形が基本です。
実際に営業するためには、どんな種類のお酒や食べ物を売るのか決めた上で、必要な許可・資格を取得する必要があります。
また、イベント限定ではなく通常営業を考えているなら、営業場所・時間帯についても配慮が求められます。
しかし、お客さんの笑顔を間近で見られ、お酒という高いリピート率を持つ商品を取り扱いできるメリットは、手続き・準備の面倒さを補って余りあるものがあります。
近所に酒場がない地域への出店が許可されれば、それだけで大きな収入を稼げるチャンスですから、入念に戦略を立てて挑戦して欲しいと思います。