始める前に覚えたい、飲食店経営における開業資金の集め方
あこがれのお店を立ち上げるためには、それなりに大きなお金を用意する必要があります。中には自己資金だけですべてをまかなえるケースもありますが、飲食店経営では多くの場合出資を募り、店舗を準備するのが一般的です。
しかし、具体的にどのような方法でお金を集めれば安全・確実なのか、あまりよく分かっていない人も多いのが実情です。
そこで、この記事では、飲食店を開業するにあたり、その資金を効率よく集めるための各種方法をご紹介します。
資金調達の方法は、大きく分けて3つある
まとまった開業資金を調達する方法は、大きく3つのカテゴリーに分けられます。
自分の身の回りにいる人に頼んでお金を借りるか、金融機関で融資を受けるか、国や地方公共団体が用意している助成金・補助金を利用するかです。
まずは、それぞれの方法について、その概要をお伝えします。
家族や友人にお願いしてお金を借りる
自分の夢を応援してくれる家族・親しい友人にお願いして開業資金を借りる方法は、資金調達の中でも比較的ハードルが低い部類に入るかもしれません。
地方など、家族や友人のような親しい人間からお金を借りられないような人は、開業しても信頼を勝ち取れないなどと言われていた時代もあったようです。
身内からお金を借りて開業する場合の注意点としては、返済義務があると、他の融資を受ける際に資産として扱われないケースが考えられます。
よって、実質的な出世払い・返済義務なしの出資といった形でなければ、今後の資金計画に少なからず影響を与えるおそれがありますので注意しましょう。
金融機関などを頼って融資を受ける
地方銀行・信用金庫などの金融機関や、日本政策金融公庫の融資制度を利用する方法は、身内に迷惑をかけず自分の責任で開業できる点では安心です。
地方銀行や信用金庫を利用する場合、金融機関側が万一のことを考えて保証協会付きの融資を受けるケースが多く、審査のスピードはどうしても遅くなりがちです。
よって、融資を受ける場合、多くの人が日本政策金融公庫に頼る現状があるようです。
所定の要件を満たし、助成金・補助金を使わせてもらう
すでに飲食店を何らかの形で開業しており、その後の運営資金を手に入れたいと考えているようであれば、国や地方公共団体の助成金・補助金を利用する方法があります。
対象となる経費や募集対象者の制限があるため、条件に合致しなければお金をもらえないというデメリットはありますが、融資と違い返済の義務がないので、安心してお金を利用できます。
それぞれの方法でお金を集めるために必要なこと
これら3つの方法を使ってお金を集めるにあたり、各々の状況で考えておくべきことがあります。
以下に、各種方法を利用する際に押さえておきたいポイントをお伝えします。
「親しき中にも礼儀あり」を実践できるか
家族・親族・友人からお金を借りたいと考えている場合、身内の間柄でお金の貸し借りをすることによって、やり取りがなあなあになってしまうおそれがあります。
お金を借りたのではなく「もらった」ことにすれば、融資の際には自己資金扱いになるので有利かもしれませんが、無理やりお金を借りるようなことがあれば、大切な人たちが離れていきます。
仲が良いといっても、特定の誰かからお金を借りるわけですから、やはり借用書などを用意しておいた方が賢明です。
まずは「日本政策金融公庫」に相談する
これから開業を検討している・開業して間もない状況であれば、多少手続きに手間はかかりますが、利子の安さ・審査の通りやすさなどを考えると、日本政策金融公庫を利用する形がスムーズでしょう。
というのも、銀行・信用金庫などは、開業したばかりの人にはなかなか正式な融資を受け付けてくれず、できたとしても時間がかかるからです。
日本政策金融公庫のプランの中では、「中小企業経営力強化資金」のプランを選ぶと有利です。
利率も低く、中小企業等経営強化法に定める「認定経営革新等支援機関の専門家」が手続きを代行してくれるため、しっかり話を聞いて事業計画を立てているなら、融資が通る可能性が高い方法と言えます。
審査を通りやすくするポイントとして、自己資金を多めに用意しておく(開業資金の1/2~1/3)、飲食業で数年の経験年数を積み上げる、滞納などの事故を起こしていないなどの条件を満たす必要があります。
また、提出する事業計画書の中身が薄かったり、面談時の受け答えがルーズだったりすると、融資に影響を及ぼす可能性がありますから、できるだけ融資に成功した人の意見を聞いてから準備しましょう。
助成金や補助金は「先払い」が原則
助成金・補助金に関しては、一部例外こそありますが、基本的に先払いが原則です。
つまり、実際に発生した経費に対する補助という位置付けで支給されるため、費用が発生する前にお金がもらえるわけではない点に注意が必要です。
また、あらゆる助成金・補助金について、国民の誰もが平等にもらえるわけではありません。
飲食店業の場合、代表的な補助金としては、以下のようなものがあげられます。
- 小規模事業者持続化補助金
- 生衛業受動喫煙防止対策事業助成金
- IT導入補助金 など
一見、飲食店業には馴染まないと思われるものもありますが、例えばIT導入補助金であれば、業務効率化を目的としたITツール導入について、経費の一部を補助する目的なら申請できます。
この他にも、持続化給付金・家賃支援給付金など、多くの事業者が受けられる給付金がありますから、自分が補助を受けようとしているジャンルを確認しつつ、申請の手続きを進めましょう。
比較的歴史が新しい開業資金の集め方・クラウドファンディングについて
現代では、既存の融資の他に、新しい開業資金の集め方を活用することもできます。
その一つがクラウドファンディングで、うまくアピールが出資者に届けば、必要な予算を集めやすい点が魅力です。
以下に、主なクラウドファンディングの種類についてご紹介します。
実店舗経営経験があるなど、ある程度ファンがいるなら購入型クラウドファンディング
一つのプロジェクトにつき、支援者がお金を出資する仕組みのクラウドファンディングです。
特徴的なのは、出資した人がもらえるものが、お金ではなく商品・サービス・グッズなどという点です。
目標金額に達成しないとプロジェクトが成立しない方法と、目標金額に達成しなくてもプロジェクトが進む方法の2種類を選択できます。
非営利活動を想定しているなら寄附型クラウドファンディング
プロジェクトに対して、基本的に出資者が金銭的・物質的な見返りを必要としないタイプのクラウドファンディングです。
被災地支援・シングルマザー支援など、社会貢献の意味合いを持つものが多く、特設ページに名前が載るなどのリターンを提示している団体もあります。
NPO法人・自治体ベースで飲食店経営を想定している場合は、こちらのタイプを選ぶとよいでしょう。
融資型はどれだけ自分の想い・コンセプトを現実的なレベルに落とし込めるかが重要
資産運用を目的としたクラウドファンディングでは、融資型クラウドファンディングがあげられます。
個人投資家から小口資金を集め、それをまとめて借り手となる企業に融資する形でプロジェクトが立ち上がっています。
日本人からすると、かなり冒険的なプロジェクトも少なくなく、結果が出るかどうか不透明な部分もあります。
プロジェクトの内容はもちろん、立ち上げた背景や人物の詳細が信用されなければ、お金を集めるのは融資より難しいかもしれません。
おわりに
以上、飲食店経営における開業資金の集め方について、各種方法をお伝えしました。
ある程度の自己資金があって、比較的難易度の低い方法を選べば、そこまで融資は難しくないことがお分かりいただけたと思います。
日本政策金融公庫の融資を安心して受けられるようにするには、必要な自己資金額を減らす選択肢を増やすことも一案です。
例えば、実店舗ではなくキッチンカーを開業手段に選ぶなら、その分初期投資額は少なくなります。
夢に向かってお金の準備を進めるだけでなく、現状からどのような選択肢が選べるのかを判断することも、飲食店経営にとっては大切なことです。
開業してからでは遅いですから、できるだけ初期投資を減らす選択肢を増やした上で、自分のやりたいことを実現できる資金を準備しましょう。