キッチンカーでスープを移動販売する魅力とメニュー例
キッチンカーでスープを移動販売する魅力と、キッチンカーでの販売に適した5つのスープメニューを紹介します。
キッチンカーのメニュー開発を検討する際、消費者ニーズと移動販売の強みをいかに組み合わせられるかという点が重要なポイントです。また、メニューはキッチンカー内での狭い調理スペースが提供上のネックとならないものを選ぶ必要もあります。
スープ料理は、柔軟なメニュー開発が可能で、「一汁一菜」に親しんできた日本の消費者の食文化的特性にかない、多忙なビジネスマンのニーズを満たすという点で、キッチンカーでチャレンジし甲斐のあるメニューといえます。
スープ料理の柔軟なメニュー展開、販路開拓はキッチンカーでこそ可能
キッチンカーでスープを移動販売する魅力は、機動力を活かし、春夏秋冬、柔軟なメニュー展開で顧客のニーズに寄り添うことができる点です。
コロナ禍で外食業界全体がテイクアウトに力を入れています。キッチンカーの強みは機動力、つまり顧客のいる場所へこちらから出てゆくことができるという点です。料理人が作る本格派のスープを、キッチンカーで手軽に買って家で食べられるのは大きなアピールポイントといえます。
また、2021年現在、コンビニエンスストアでは「具沢山」や「一日の1/2の野菜がとれる」などと銘打ったスープが次々とチルド形態の新商品として投入されています。このことから、栄養も取りたいけど手軽さもほしい、忙しい現代人のランチ需要を満たすメニューとしてスープは根強い人気を誇っているといえるでしょう。
このようなランチ需要のもと、キッチンカーで作るスープなら、コンビニよりちょっとしゃれていて目新しく、目の前で作りたてが食べられる、そんな「魅力的な一杯」を提供することができます。
スープのバリエーション
キッチンカーでの提供に適したスープ料理のメニュー例を紹介します。
ちょっと一杯、おやつ代わりに飲むスープでは、味だけでなくしゃれたカップ、こだわりの素材、工夫を凝らしたトッピングなど、トータルで家庭の味との差別化が図れるものをおすすめしています。
また、ごちそう系のスープは、いわばプロの料理人から時間と技(わざ)を買うスープです。消費者がランチに選びたくなる、巷で流行していて話題性のあるものもピックアップしました。
バリエーション1:ごちそう系「食べる」スープ
- 丸鶏を使ったスープ
- 韓国の薬膳スープ参鶏湯(サムゲタン)に代表される豪華なスープです。
- 丸鶏は米国産ゲームヘン(生後約1か月のひな鶏)がネット通販で出回っており、趣味で料理をする男性に注目されています。丸鶏スープは韓国風にこだわらず和・洋・中と多彩なアレンジが可能で、丸鶏を車内厨房で切り分ける作業はパフォーマンスになりますし、丸のままや半身なら住宅地やオフィス街でのテイクアウト需要が見込めます。
- スペアリブのスープ(排骨湯 パーコータン)、肉団子(獅子頭 シーズートー)鍋
- 排骨湯は、豚肉以外の素材としては大根、コーン、冬瓜、レンコンなどバリエーションも多彩です。いずれもシンプルに素材のうまみを味わうスープで、ごまかしがきかず手間のかかる料理ですが、キッチンカー内での作業は盛り付けのみです。
- 獅子頭鍋はこぶし大の肉団子を使った古典的中華レシピで、ボリューム満点の食べ応えあるスープです。
- スープカレー
- ランチタイムでは「やはりご飯がほしい」という消費者のニーズも高いため、ご飯に合うカレー味はスープメニューの有力候補です。
- スープカレーは、骨付き鶏モモ肉1本丸ごとや角切りの豚肉と、大ぶりに切った野菜を使う札幌市発祥のスープです。かつては札幌観光で味わうローカルグルメという位置づけでしたが新店が次々とオープンし(現在市内で200店以上)、有名店はこれに押されて大都市中心に全国展開しているため、消費者の認知度も高くなっています。
- 有名店はオンラインショッピングにも注力しているものの、価格は送料別で1食1,000円程度とかなり高めですので、キッチンカーでの直接販売には参入チャンスがあります。
バリエーション2:「飲む」スープ
- 冷たいスープ
- 冷たいスープは、事前の仕込みさえしておけば、あとは車内でカップに注ぐだけのキッチンカーにぴったりのメニューです。
- 冷たいスープの代表格としてはスペイン料理の「ガスパチョ」と米国発祥のジャガイモのピュレスープ「ビシソワーズ」が挙げられます。他にはヨーグルトとキュウリを使ったトルコのスープ(ジャジュク)、アボカドのスープなどもヘルシーで目新しく、オフィス街で注目されるメニュー候補のひとつです。
- ガスパチョには氷の代わりにトマトシャーベットを上に乗せてもインスタ映えしますし、ツナやゆで卵、生ハムを加えるアンダルシア地方のバリエーション(サルモレッホ)は食事代わりになります。
- 冷たいスープは、トマトサルサやミントなど新鮮な生野菜、ハーブを使ったカラフルなトッピングで見た目を工夫すればさらに良いと思います。
- ポタージュ系スープ
- ベシャメルソースを使ったクリームスープやピュレスープ(材料は甲殻類、季節の野菜、豆など)はリッチで口当たりなめらかなスープです。甲殻類のピュレスープのみ特にビスク(Bisque)と呼び、濃厚な海老のビスクはスープ専業店でも定番の人気メニューです。
- キッチンカーで提供するピュレスープは、車内の厨房で良い状態のまま提供できるかが課題ですが、1℃単位で温度管理可能なマイコン制御のスープジャーが販売されており、提供直前の工程まで保温可能です。
- 提供にあたっては素材の良さやインスタントにはない味わいを消費者にアピールするだけでなく、スープカップもオシャレでエコなものを選ぶことが消費者の心をつかむ演出のひとつとなります。
「ちょっと一杯」からコアなファンづくりへ
スープ専業形態で成功し、全国展開しているある企業のコンセプトは「女性が一人で入れるファストフード店」だったといいます。実際、ガラス張りの店内を外から見ても女性客比率はかなり高いようですが、スープ好きは男女を問いませんので、キッチンカーでは男性客にも臆せず並んでもらいたいものです。
大きめのカップを用意し、メニュー横に「本日大盛無料」と張り出すなどの工夫をすると、男性客にも注目してもらえるでしょう。
キッチンカーの横でスープを飲んでいたお客様が立ち去るとき、「さあ、もう少し頑張ろう」とつぶやいてくれたとしたら。そう思ってもらえるメニューを開発することがキッチンカーでスープを提供する料理人の最大の目標であり、また喜びではないでしょうか。
小腹が空いたときのスナックであり、立派な食事でもあるスープ。小さなキッチンカーがお客様に栄養とともに元気を与えます。「私のランチはここ」というリピーターが増えてゆくような、意欲的なメニュー開発が望まれます。