
ソフトクリームは移動販売できる?開業に必要な営業許可や設備について解説
ソフトクリームは、性別や年齢に関係なく多くの方に好かれるスイーツの一つで、中には人気の専門店もあるほどです。
しかし、キッチンカーでソフトクリームを売ろうとすると、「ソフトクリームの移動販売が認められない」ケースが多いことに驚かされます。
詳しくは出店場所を管轄する自治体に問い合わせてみる必要があるものの、もし許可が下りないとすると、キッチンカーでソフトクリームを売ろうと考えていた人にとってはショックですよね。
この記事では、なぜこのような状況が発生しているのか、移動販売できる都道府県はあるのかなどに触れたところで、実際にソフトクリームの移動販売を行う場合のメリット・デメリットや、利益を出すためのメニューについてご紹介します。
- 『ソフトクリームを外で売るのは難しいの?』
- 『実際に売る場合、どうやって売ったらいいんだろう……』
このような疑問をお持ちの方は、今後のためにぜひお読みください。
ソフトクリームのキッチンカーを見ない理由と対策
キッチンカーは全国各地で見られますが、ソフトクリームのキッチンカーを見かけた経験のある人は、意外と少ないのではないでしょうか。
それもそのはずで、多くの自治体(保健所)では、ソフトクリームのキッチンカーを営業形態として認めていないのです。
都道府県によってスタンスが違う
代表的な悪例が東京都で、東京都では「ソフトクリームを移動販売する状況を想定していない」という理由で、営業許可を出してもらえない状況が続いています。
衛生基準の厳しさが一因とも考えられますが、現代の機器は機能も大きく改善されており、加熱殺菌処理機能を備えたものも見られますから、やや古臭い対応と言えるかもしれません。
これに対して、北海道の札幌市では、「自動車による食品営業の取扱要綱」において個別に遵守事項を定めており、その条件を満たすなら営業は可能としています。また、宮城県宮崎市もソフトクリームの移動販売を認めているという情報があります。
都道府県によってソフトクリームの移動販売に対するスタンスは異なるものの、開業が全く不可能というわけではありません。
まずは自分が営業圏として考えている地域の保健所に問い合わせてみるのが、開業に向けた第一歩となります。
ソフトクリームの種類によっては売れる場合もある
誤解を招きやすいところなのですが、移動販売車でソフトクリームを売る場合、ソフトクリームの作り方によって、許可が得らえる場合と得られない場合があります。
カセット抽出式のソフトクリームなら、ソフトクリーム製造機本体に汚れがほとんどつかないため、東京都でも衛生的と判断されて採用された例があります。
一方、ソフトクリームフリーザーを使って作るソフトクリームは、工程が複雑で材料もフリーザー内にとどまることから、清潔を保ち消毒を行うのに手間がかかり、衛生面でふさわしくないと判断されるケースも見られます。
いずれにしても、ルールをきちんと守ればOKを出してくれる自治体はありますから、あきらめずに保健所に相談や問い合わせをしてみると良いでしょう。
ソフトクリームのキッチンカーのメリット・デメリット
許可の面で敷居が高そうなソフトクリームのキッチンカーですが、実際に営業する場合のメリット・デメリットには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。以下に、主なものをご紹介します。
メリット:売りやすい
ソフトクリームをキッチンカーで売るメリットは「売りやすい」ことです。
ソフトクリームは老若男女、誰にでも愛される食べ物で、おやつとしても重すぎない丁度よいボリュームなので、ターゲットや時間帯をそれほど気にせずに気軽に販売できます。
また、ソフトクリームをきれいに作る技術を学ぶのはそれほど難しいことではないので、営業許可や機材の調達さえできてしまえば、あとは誰にでも販売可能です。
食べる人は気軽に食べられ、売る人も気軽に作れる分、ビジネスチャンスは幅広いと言えます。
デメリット:季節や地域・天候に売り上げが左右される
ソフトクリーム販売は、よほどの人気店でない限り、多くの要素に売り上げが左右されてしまいます。
分かりやすいのが季節で、夏場は売れたとしても、冬場になると温かいものを食べたいと考える人が多くなるため、メニュー構成を考え直さなければなりません。
売ろうとしている場所でソフトクリームの人気があるかどうかをチェックするのも大事なポイントです。温泉地やリゾート地・デパートなど、通年人が押し寄せる環境ならいざ知らず、オフィスや住宅地で売ろうと思うなら、建物の中にいる人が外に出たくなる気温でなければ売れにくいでしょう。
出店のタイミングをシビアに判断しなければならないのがソフトクリーム店のデメリットで、それに加えて営業許可が出る地域が限定されるという問題もあり、選択肢が狭くなりがちです。ただ、逆に言えばライバルは少ないでしょうから、これらの問題をなんとかできれば安定した売り上げが期待できます。
開業時に押さえておきたいポイント
ソフトクリームの移動販売を始めるにあたっては、許可の難易度の話だけでなく、費用やターゲット層についても押さえておくべきポイントがあります。
まずは以下の情報を頭に入れてから具体的な戦略を練りましょう。
必要な資格・許可
キッチンカーは車なので、運転に関しては「普通自動車免許以上」の資格を取得していることが必要です。
また、各地域の食品衛生協会で「食品衛生責任者」の資格を取得する必要があります。
これらの取得はそれほど難しくなく、自動車免許は自動車学校で勉強すれば良いですし、食品衛生責任者は所定の講習を受ければ取得できます。
ソフトクリームの場合は保健所の営業許可の取得が難関であり、そもそもスタートの段階で許可が認められないケースも往々にして存在します。
また、営業許可を取得する際、どの業種で許可を取得すればよいのかは各自治体によって判断が異なります。
自分が営業しようと考えている地域を管轄する自治体の保健所に連絡し、カセット抽出式ならOKなのか、ソフトクリームフリーザーは条件付きでOKなのか、どの営業許可を取得すれば良いかなど、細かいところを確認してみましょう。
必要な機材と導入費用
(出典元:楽天)
ソフトクリームを販売するのに最低限必要な機材は以下のとおりです。
- ソフトクリームメーカー
- 冷凍ストッカー
- 発電機やインバーター+サブバッテリー
フリーザー式のソフトクリームメーカー(ソフトサーバー)は飲食店で扱われるような本格的な業務用機器となってきますので、およそ100万円程度します。非常に高額なので、中古品の購入や、レンタル・リースで調達することを積極的に検討してみてください。例えばリースなら月2~3万円のコストで収まります。
カセット抽出式のソフトクリームメーカーはフリーザー式の5分の1程度の価格となっていますが、取り扱っている業者は多くありません。
冷凍ストッカーは、ミックスなどのソフトクリームの原料を保管する際に使います。大きさにもよりますが2万円くらいからあります。
冷凍ストッカーは移動中も電源を入れておく必要があるため、発電機やインバーター+サブバッテリー等、電気を自給する設備が必要となります。販売時にはソフトクリームメーカーの電源も取ることになるので、3,000W前後の高出力なものが理想です。
利益を出すためのメニュー例
シンプルなソフトクリームが一番美味しいという意見ももちろん無視できませんが、経営者としては一工夫加えて単価を上げたり、サイドメニューも一緒に買ってもらう等の努力で利益を最大化することを考えなければなりません。
そこで、ソフトクリームの移動販売で通年・長期的に利益を出していくために必要なメニューの例を考えてみました。
フロートドリンク
コーヒーやジュースなどの水面にソフトクリームを浮かべて作る「フロートドリンク」。真夏の炎天下では甘く濃厚なソフトクリームよりも、どちらかというと喉の乾きや体のほてりを抑えるために、冷たくスッキリとしたドリンクやかき氷の方が需要があります。
そこで、フロートドリンクのラインアップがあれば、喉の乾きを潤したいお客さんも取り込むことができます。
ホットメニュー
冬場はソフトクリームの販売数が夏場の3分の1程度に落ち込むと言われています。しかし、かき氷やシャーベットよりも落差は小さく、工夫次第ではシーンズオフ時の売り上げをかなりカバーすることができます。
工夫の一つが「ホットメニューを扱う」ことです。単純にソフトクリーム以外の商品で利益を穴埋めする目的もありますが、温かい食べ物とソフトクリームは意外にも相性がよく、冬場でもセットで買っていかれる方が多いそうです。
温かくて少し渋いコーヒーや紅茶を飲んでほっと一息つきつつ、甘く冷たいソフトクリームを頬張るというのはなんとも贅沢。余裕があればワッフルやクレープといったドリンク以外のメニューもあると幅が広がります。
トッピング
ソフトクリームのトッピングは、お店の個性を出すのにも、単価を上げて売上を伸ばすのにも役立ちます。
カットフルーツやコーヒーゼリーなどの定番ものから、タピオカなどの流行に乗ったもの、お店の顔となるようなインパクト重視の変わり種など、たくさんのバリエーションが考えられますね。
まとめ
ソフトクリームは、その甘いルックスと相反して、営業許可をキッチンカーで取るのはシビアなスイーツです。
しかし、種類や営業エリアを選べば、お店を出すことが認められるケースもあるため、まずはあきらめずに許可を得られるよう行動することが大切です。
また、ソフトクリームのライバルは意外と多く、夏場の猛暑ではかき氷やシャーベットにシェアを奪われる恐れがあるため、お客さんを逃さないためのメニュー開発が必須と言えます。