移動販売車で唐揚げを売るのに必要な設備や許可は？
夕飯のおかずや、ちょっとしたパーティーなど、様々なシーンで食べられる唐揚げは、日本全国で人気の品です。
そのため、移動販売車の分野でも、「キッチンカーを使って唐揚げを売りたい」と考えている人は一定数存在します。
ただ、唐揚げはたこ焼きなどに比べるとオペレーションが難しい傾向にあり、一から設備を用意するのも大変ですし、フライヤーを使うため厨房の汚れなども気になります。
そこで検討したいのが、中古車をベースにしたキッチンカーをカスタマイズする方法です。
この記事では、キッチンカーを使って唐揚げの移動販売をしたいと考えている人向けに、唐揚げを販売するメリット・開業時に求められる資格・許可、準備が必要な設備・備品などの情報を、営業時に押さえておきたいポイントと一緒にお伝えします。
幅広い層に人気で外でも手軽に食べられる唐揚げはキッチンカー向きの商材
Googleなどで「唐揚げ」と検索すると、実にたくさんのレシピやお店の情報がヒットします。それだけ、唐揚げは全国的な人気を誇っていると言えるでしょう。
海外でも揚げ物（フライ）は人気で、フィッシュ＆チップス、フライドチキンなど、様々なメニューが知られています。
唐揚げをキッチンカーの商材に選ぶメリットは、そういった商品そのものの人気に加えて、ご飯ものよりも気軽にスナック感覚で食べられる点にあります。ちょっと小腹が空いた時、つまようじで食べることができるので、お客さんにとっては観光地やイベントなどで有力な選択肢になります。
出来立てにこだわらなければ、ホットショーケースに保存もできますから、オペレーションの形態によってはスピーディーに提供することも可能です。
唐揚げは、キッチンカーで販売しやすい人気と手軽さを持っている商品なのです。
唐揚げのキッチンカーをはじめるには何が必要？
唐揚げのキッチンカーを開業するためには、「唐揚げのためのキッチンカー」をカスタマイズする必要があります。
以下に、おすすめのキッチンカーのタイプのほか、開業前に必要な資格、用意すべき設備・備品などをご紹介します。
キッチンカーの製作コストはできるだけ抑えたい
唐揚げを売るキッチンカーの傾向をチェックすると、どちらかというと普通車ベース・商用車ベースのものを多く見かけます。しかし、フランチャイズでは軽自動車ベースのキッチンカーも見られるため、大きさはそこまでこだわる必要はないと考えてよいでしょう。
具体的にカスタマイズを進める場合、一から設備を揃える新車・中古車ベースのものを選ぶケースと、過去に唐揚げを売っていたキッチンカーを選ぶケースが考えられます。
後述しますが、一から設備を整える場合、その設備にまとまった費用が必要になるため、できれば中古車ベースにして費用を安く抑えたいところです。
ちなみに、過去に唐揚げを売っていたキッチンカーを、フリマアプリなどを経由してそのまま販売しているケースはいくつか見られます。ただ、状態の確認が難しかったり、そのまま使用できなかったりするデメリットは否めないため、やはり状態のよい中古車をベースに、キッチンカーの製作業者に依頼して自分好みに仕上げていった方がよいでしょう。
味にこだわるならフライヤーはガス式を選びたい
唐揚げをキッチンカーで揚げるためには、フライヤーという調理器具を用意しなければなりません。保温用のホットショーケースを準備したとしても、唐揚げをあらかじめ揚げた状態で温めてしまうと、揚げたてよりもかなり味が落ちてしまいます。
フライヤーには電気式とガス式があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。予算と扱いやすさを重視するなら電気式、味と温度にこだわるならガス式を選ぶことになるでしょう。
また、原材料となる鶏肉を保管するため、冷蔵庫・冷凍庫の準備も必要です。油を扱うことから、汚れが落ちやすいオールステンレスを検討するなど、水周りやシンクの構造にも注意したいところです。
これらの準備を一通り進め、完璧に仕上げようと思えば思うほど、設備・備品にかかる費用は大きくなります。そのため、ベース車両を中古車にして費用削減につとめるなど、予算との総合的なバランスを考えて取捨選択することが求められます。
食品衛生責任者と飲食店営業許可が必要
唐揚げをキッチンカーで販売するためには、以下のような資格を用意する必要があります。
基本的には、ランチメニューを取り扱う場合と変わりませんが、地域によって細かい取り決めがあるケースもありますから注意しましょう。
普通自動車／中型自動車免許
キッチンカーは自動車の一種ですから、公道を運転するための自動車免許が必要です。ただ、特殊車両という扱いにはならないため、特殊自動車免許の取得は必要ありません。
軽自動車ベースのキッチンカーを運転する分には、普通自動車免許で問題ありません。しかし、トラックベース・バンベースのキッチンカーは、車両総重量などの条件に応じて、中型自動車免許の取得が必要な場合がありますから、取得前に条件を確認しておきましょう。
「飲食店営業」の営業許可
唐揚げは、社会通念上「惣菜」として認められるため、製造・販売のためには飲食店営業の営業許可を取得します。
その他に、ソーセージなどの商品を出そうと考えている場合は、地域によって「食肉製品製造業」の資格が必要になることもありますから、出店予定の地域を管轄する保健所に確認しましょう。
食品衛生責任者
キッチンカーで食品を調理して提供する際には、必ず1名以上の食品衛生責任者が必要です。そのため、各都道府県の食品衛生協会を通じて、食品衛生に関する講習を受けなければなりません。
所定の講習を受けた段階で、修了証をもらうことができます。それからは、全国共通の資格として通用しますが、新しい地域で営業する際には、地域を管轄する食品衛生協会に確認を入れた上で営業しましょう。
唐揚げの移動販売で押さえておきたいポイント
唐揚げは、どの場所に出店してもニーズが一定数あります。それだけに、参入が比較的容易で、ライバルも多い傾向にあります。
確実に利益を出したいと考えるなら、他の商品との差別化をどう実現するのか、真剣に考える必要があるでしょう。
ターゲットを軸に出店場所・出店時間を決める
唐揚げは、単品で提供するメリット・デメリットが、時間によって変動する商品の一つです。
昼下がりや夕暮れ時なら、スナック扱い・おかず一品分としてカウントしてもらえるかもしれませんが、ランチ・ディナータイムの最中になってしまうと、唐揚げだけでは役不足になります。
逆に、ディナータイムよりも遅い時間なら、お酒のおつまみに一品欲しくて購入する宅飲み層も出てくるかもしれません。
複数のキッチンカーが集まるスペースに出店しているなら、お酒・カクテルと合わせることも戦略の一つとして立てることができます。
人それぞれで違う「唐揚げが食べたくなる時間」を把握することが、売上増につながります。
味と食材の質にこだわる
唐揚げでより多くの利益を出すためには、意識すべきポイントが2つあります。それは、唐揚げの質にこだわることと、別の商品を提供する可能性を模索することです。
鶏肉の種類は多種多様で、地鶏は地域性の強さが特に強調される傾向にあります。ブランド品にこだわる・新鮮な地元の地鶏を扱うなど、経営者のこだわりが顧客に評価されるため、ターゲットの性質を見誤るとまったく売れないおそれがあります。
地元産にこだわりのある地域なら、やはり地元の鶏を使った唐揚げを売った方が、観光客・地元客ともにウケはよいでしょう。逆に、都会なら地方色を打ち出した方が希少性をアピールできます。
出店してみて、ターゲットとした地域における唐揚げの人気が今一つだと分かったら、目新しいもの・他にニーズのある揚げ物を検討してみましょう。鶏肉を使うのであれば、唐揚げではなくとり天にするなど、若干メニュー構成を変えて様子を見るのも一手です。
魚系で言えば、フィッシュ＆チップスはお酒との相性も抜群ですし、揚げかまぼこのキッチンカーも出店されています。野菜の素揚げをベースに考えるなら、スープカレーという選択肢も魅力的です。
まとめ
数あるキッチンカーの商品の中でも、唐揚げは全国的に人気の高い商品です。それだけに、他の車と差別化を図るのは難しいですが、基本的に毎日食べるものではないため、出店場所を細かく変えながら売上の傾向を見るのも面白い商品です。
ただ、リピーターを増やすためには、お店独自のこだわりが感じられる商品設計は必須と考えてよいでしょう。時には、唐揚げ以外でフライヤーを使って作れる商品を考えることも、視野に入れなければなりません。
また、売上が時間帯に左右される性質を持つ商品の一つであることから、売上目標を立てる場合、複数のケースについて情報収集が必要です。本格的な味の追求には、車両本体以上に設備投資が重要になってくるため、限られた予算を有効に使えるよう計画を練りましょう。