移動販売車(キッチンカー)の維持費はどれくらい?費用の内訳と車両タイプごとの目安を紹介
移動販売車を使って商売を始めるにあたり、意外と忘れがちなのがキッチンカーの維持費です。
多くの人は、車両を購入する際に本体価格を思い浮かべると思いますが、キッチンカーは車両ですから、維持するためには一定額の出費を覚悟しなければなりません。
具体的には、各種税金やメンテナンス費用・消耗品等の出費を想定して、車両の購入・カスタマイズを考える必要があります。
何の知識もないまま商売を始めてしまうと、たちまち維持費で貯金が飛んで行ってしまうおそれもありますから、事前に出費をある程度見積もっておくことが大切です。
この記事では、キッチンカー(移動販売車)の運転資金を算出しようと考えている人向けに、税金・保険・修理・メンテナンス費など、車両維持のために必要な費用の内訳・概算をご紹介します。
キッチンカー(車両)の維持に必要な各種費用
一台の車を維持するためには、数多くの費用が発生します。具体的には、税金・整備費用・場所代・消耗品といったランニングコストを頭に入れておかなければなりません。
以下に、主な費用をご紹介します。
自動車保険料(自賠責/任意)
ドライバーが、自動車に関連した何らかの損害を発生させてしまった場合、保険会社が保険金等により損害を補償してくれる保険を「自動車保険」といいます。
キッチンカーを運転している際に交通事故を起こしてしまった場合、ケガをした人・車両を壊されてしまった人のためのお金を準備する目的で、ドライバーが加入する必要のある保険です。
自動車保険には自賠責保険と任意保険の2種類があります。
自賠責保険は、他人を死亡させたりケガをさせたりした場合に、慰謝料・治療費などの損害を迅速に補償するための保険です。支払限度額が決まっており、被害者1名あたりの死亡損害は最大3,000万円・後遺障害による損害は最大4,000万円・ケガによる損害で最大120万円となります。また、加入は義務で、車両の大きさと契約期間に応じて保険料が変わります。
自動車税
自動車税は、毎年4月1日時点で車を所有している人にかかる税金です。基本的に、車を保有している限りは毎年発生するコストです。
キッチンカーを運転する場合、大きく分けて4ナンバー(軽トラックなどの小型貨物自動車)と1ナンバー(大型トラックなど普通貨物自動車)という形で、税金が分類されます。
税額は最大積載量によって決まりますが、軽自動車の場合、平成27年4月1日以後に最初の新規検査をした車両は5,000円(4ナンバー)、最初の新規検査から13年を経過した車両は6,000円、それ以外の車両は4,000円です。
重量税(自動車重量税)
新車購入時・車検時に支払う税金で、一般的な自家用車ならそれぞれ3年・2年に1回の支払ですが、4ナンバー車(軽自動車は除く)・1ナンバー車は1年ごとの支払いです。
こちらは、車両重量ごとに金額が決まっており、新規登録から13年以上・18年以上になると、該当する車両の重量税が増額します。
なお、軽自動車の4ナンバーは、2年に1回の車検です。
車検費用
自賠責保険・重量税は、車検時の「法定費用」に分類されます。印紙代も含め、車両の条件に応じて必ず発生する費用です。
工場に車検を依頼した場合、車の状態をチェックして「次の車検まで問題なく走れるかどうか」をプロの目で確認してもらいます。
車検を受けた際は、その際に発生する工賃・車検を通すための代行費用なども含めて、工場に支払うお金を用意しなければなりません。
価格帯はお店によってさまざまで、一般的に【ディーラー>整備工場>車両販売店>カー用品店>車検代行業者】の順に安くなります。
自力でやるならユーザー車検という方法もありますが、手間も時間もかかりますから、専門知識がある人に限られるでしょう。
整備点検費用
車両の整備や点検は、車検だけやっていればよいというわけではなく、不調を防ぐための定期的な点検・整備が必要です。
車両に応じて整備・点検を必要とするタイミングはまちまちで、特に中古車は思ってもみなかったところにトラブルを抱えているケースもありますから、不安を感じたらできるだけ速やかに点検を入れたいものです。
オイル交換・タイヤ交換などの折に、こまめに点検を依頼することで、車の寿命を延ばすことができます。特に、エンジンオイルは車の血液ですから、できるだけ新しい状態を保つことが、その他の部位のトラブルを未然に防ぐことにつながります。
オイル交換だけで済めば数千円で事足りますから、こまめに交換の機会を設けましょう。
修理費
車を走らせたり、商品を日々提供したりする中で、故障は避けられない問題です。車両が丈夫で設備が頑丈なら、しばらくは問題なく使えるはずですが、やはりいずれは寿命が訪れます。
その際に、修理だけで済めばよいのですが、場合によっては部品をまるまる新品に取り換えなければならないケースも考えられます。
引当金を用意するのは難しくとも、オペレーションにおいて必須の設備が故障した場合に備えて、買い替えの料金を見積もっておくことが大切です。
駐車場代
キッチンカーを停車しておける場所を確保する際、土地によっては駐車場代が必要になります。また、出店場所を確保する都合上、駐車場代を支払うことも考えられます。
場合によっては両方の駐車場代を支払い続けることになりますから、都市部などランニングコストが高くつくケースも想定しなければなりません。
気が付いたら馬鹿にならない金額に膨れ上がるため、いつまで同じ場所で営業を続けるのかを想定しつつ、入念なシミュレーションが必要です。
タイヤ等の消耗品費
車はたくさんの部品から成り立っており、ワイパー・タイヤ・ホイール等の消耗品も、一度に揃えればそれなりの値段になります。
雪が降る地域で営業する場合、夏用・冬用を用意しておかなければならず、単純計算で倍額が発生します。
製造された時期から数えて、概ね3シーズン~5シーズンごとの交換が望ましいですが、ワイパーの場合は商品によってもっと早くなることが予想され、逆にホイールはこまめに洗車をしていれば長い間使える場合もあります。
タイミングは車によりけりですが、安全に運転することを考えた場合、消耗品もこまめに交換しておきたいところです。
車両タイプごとの年間維持費目安(車検+税金+任意保険)
上記の各種維持費を踏まえて、続いては車両タイプごとの年間維持費目安についてお伝えします。
どのような車両をベースに考えるかによって、年間維持費が変わってくるため、予算と理想の間で最善の選択をするための参考にしていただければと思います。
なお、消耗品や修理費用などは個人差があるため、今回はすべてのキッチンカー経営に通じる必須の維持費のみをご紹介しています。
軽トラック/軽バンベースのキッチンカー
軽トラック/軽バンをベースにしたキッチンカーは、維持費がとても安くなります。2年ごと・7万円ほどの安い金額で車検が受けられ、自動車税は年額4,000~5,000円、任意保険も条件次第で年額数万円程度の出費で済みます。
総額9~13万円という金額を実現できるのは、軽トラック/軽バンベースのキッチンカーの強みです。状態のよい中古車を探せば、設備投資せずに営業を開始できるため、初めてキッチンカーを運転する場合はおすすめです。
1tトラックベースのキッチンカー
普通車サイズの中でも、比較的取り回しがよいタイプのキッチンカーです。車検は8~11万円ほどで済みますが、毎年行う必要があり、その点は軽ベースに比べてデメリットです。
自動車税は、1t以下なので年額8,000円と安くなります。
任意保険は車両や等級に応じて金額が異なるものの、6等級の想定で年額11~15万円程度を想定しておくと安心です。
毎年の20~27万円という出費を大きいと感じるようなら、特殊加工車として8ナンバー仕様に改造し、車検を2年ごとに切り替える方法も想定しておきましょう。
普通車バンベースのキッチンカー
軽自動車に比べて広々とスペースが使える反面、天井が低いというデメリットもあるのが普通車バンベースです。
車検費用・自動車税・自動車保険の費用は、1tトラックベースと変わりないものと考えてよいでしょう。
毎年のランニングコストは高い反面、トラックベースに比べて内装設備の製作コストは安く抑えられるため、初期費用を安く済ませて機動性を確保したい人にはおすすめです。
特殊トラック「クイックデリバリー」ベースのキッチンカー
キッチンカーとして馴染みあるデザインの一つに、トヨタ・クイックデリバリーがあげられます。中古車両も人気があり、商用で利用する際に使い勝手のよい一台です。
車検費用は、車両本体に特段大きな問題がなければ年額8~11万円ほどですが、2t車なので自動車税は年額11,500円です。自動車保険は年額13~15万円が基本となり、総額はおよそ22~27万円といったところに落ち着くでしょう。
購入・製作前に維持費について細かく確認しておくべき
キッチンカーは、ベース車両や用意する設備に応じて、維持費が大きく変わってきます。また、タイヤなどの消耗品にこだわるのであれば、その分料金も膨らみます。
商品のスムーズな提供を重視しようと考えている場合、調理場の環境を充実させたいと考えがちです。しかし、車が故障して現場に行けなくなってしまうと、当然ながら機会損失は免れません。
キッチンカーの製作段階でお金をかけすぎてしまうと、その後のメンテナンスにお金を回せなくなってしまうことも十分考えられます。キッチンカー製作を業者に依頼する場合、メンテナンス費用についても依頼前に確認しておきましょう。
まとめ
キッチンカーの維持費を細かく分けていくと、実に多くの出費があることが分かります。製作費用だけ頭に入れていても、その後のランニングコストをきちんと把握していなければ、売上だけで出費をカバーできなくなってしまうおそれがあります。
しかし、法定費用のように毎年金額の差が生じにくい出費であれば、事前に予算組みすることも難しくありません。まずは、分かる範囲から出費を予想して、原価と経費の合計を売上の50%以下に抑えることを目標にしましょう。